さて、陸アカ式指導方法解説の第3回です。
今日は主観と客観の一致という話をします。
主観と客観の一致
これは小学生だけではなく中高生、それより上の大学生、社会人でも見られるのですが「自分がやろうと思ったこと」と「実際にやってること」が異なる場合があります。
極めて具体的に話すと
- 自分では腕振りで指先を目の高さまで振っていると思っている
- 実際に振れているのは胸の高さまで
ということです。
これが「自分がやろうと思っていること(主観)」と「実際にやっていること(客観)」が異なるということです。技術的に上達したいとなったら真っ先にこのズレを修正しなくてはなりません。
なぜ主観と客観が一致していないといけないのか
なぜズレを修正しなくてはならないかというと、そのズレは一定ではないからです。
どういうことかを説明する前にある漫画のワンシーンをご覧いただきます。
これはワンナウツという野球マンガの1シーンですが、どんな球にも確実に振り遅れてしまうバッターに対しての言葉です。
つまり彼は「どんな球にも平等に振り遅れる」バッターであり、タイミングをつかむことに関しては超一流だったということです。
今、子供の腕振りにおいて主観と客観のズレが、「毎回きっちり想像より5cm振れていない」なら良いです。
あとは「思ったより5cm振ろう」という調整をすれば、思った通りに腕を振れる走りになります。
なのですが、ほとんどの子供の主観と客観のズレは「毎回5cm」という決まったズレではなく、「今は5cm」「次は3cm」「その次は6cm」の様にバラバラです。
とすると、同じ様に意識して動きを修正したとしてもできているときとできていないときがあり、それをたくさん量をこなすことによって最初成功確率が30%だったものが35%、40%にしていくという方式です。
この方式がほとんどのスポーツ教室で行っている練習です。
ただ、これ陸上だったらまだいいです。
自分が行う動作が決まっているからです。
- 直線で100m走る
- 走って跳ぶ
- 助走をつけて投げる
というように行う動きがシンプルで、動作数が少ないからです。
しかし他の競技だと努力量が果てしなくなります。
例えばサッカー。
これは次に行う動作の選択肢が無限になります。
- 走る
- 止まる
- 右に切り返す
- 左に切り返す
- フェイント(無数)
- シュート(強さ・軌道・タイミング無限)
のようにこれら全てを想定して事前に練習することはできません。
なので事前に対策をして成功率30%を努力量で35%にしている間にリーグ戦が終わります。
ではどうするのかというと、まずは思ったことを身体で再現できる確率を上げておく。これに尽きると思います。
これを無視してひたすら量にかまけた練習をしたところでその理論には限界があるので。
では一体どの様に主観と客観を一致させればよいのでしょうか?
即時動画を確認すること
これは極めてシンプルに「即時動画を確認すること」です。
そこで大切な視点が「思った通りにできていたか」です。
何も考えずに動画を見ても「ああ、イマイチ」としか思わないので、その1本を行う前に必ず
- 何に気をつけるのか
- どれくらい動かすのか
- どういう動きのイメージで行うのか
を頭に思い描きます。
この理由は思考・勉強・運動これらは全て「頭の中」から始まるからです。
思考があってその後に行動があるので、先に思考を明確化しておくことにより、その後の動画を見てのフィードバックがより効果的になるということです。
その上で動画を見るときには、自分の思考(理想の動き)と全く同じだったか、やりたいことができたかを確認します。
ここで必要となる視点は「先程の感覚だとこのズレ」ということです。
例えば
- 10の力を出していたと思ったのに見てみたら14の力が出ていた(+4)
- さっきは+4になったので、10の力を出すために6の力でやってみる
- 6でやったけど結果は8だった(+2)
- つまり力を抜きすぎた
- もう1度6でやってみると9だった(+3)
- 10に近づいてきたのであと少しだけ力を入れる
- 結果10でできた
- 自分は10でやりたかったら+4力が余計に入るから6の意識をしたらよい
というように、「自分でやろうと思ったこと」と「実際にやったこと」のズレを少しずつ修正していきます。
この訓練を何度も繰り返すうちに、最初は5回も微調整が必要だったことがそのうち3回になり、最終的にはピッタリ1回で合わせられるようになります。
これが何のスポーツにも使える、身体の使い方を踏まえた練習です。
陸上アカデミアでは「小学校卒業時にどんなスポーツを行うとしてもその他の子供よりも上手にできる状態」をゴールとしているので、この身体調整能力は非常に重要です。
それをフォローし、さらにそこから技術的に向上させるための主観と客観の一致でした。
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