Day 151 | 2026-09-29 | 火曜 | ジャンプ・プライオ・SSC
CMJ–SJ Difference — 反動ありと反動なしの差を、ばね能力の点数にしない
火曜:ジャンプ・プライオ・SSC事象(レッスンでこう見える)
しゃがんで止まってから跳ぶと低いのに、立った姿勢から沈んで跳ぶと高い。その差だけで『腱のばねが強い』と説明していないだろうか。
反動なしのつもりでも、跳ぶ直前にもう一度沈んだり、毎回しゃがむ深さが変わったりすると、比べている課題自体が揃わない。
正体(科学的メカニズム)
Countermovement–Squat Jump Comparison(反動の有無と跳躍差の解釈)
CMJは沈み込みから切り返して跳び、SJはしゃがんだ姿勢で一度静止してから跳ぶ。反動を加えると、腱などの弾性要素だけでなく、押し始める時の筋の活動や関節の力発揮条件も変わる。両者の高さの差は複数の要因を含み、腱の性質を単独で測った値ではない。
沈み込みと静止の条件が変わる → 押し始めの活動・力発揮・動きの組合せが変わる → 跳躍高の差が生じても、原因を1つには絞れない
研究1:Bobbert et al.(1996)
男子バレーボール選手6名の動作・力・筋活動を計測。押し出し開始時の姿勢が同じでもCMJの方が高く跳び、開始時の関節モーメントの違いが説明要因となった。高さの差を弾性エネルギーだけには帰せない。
男子バレーボール選手6名の動作・力・筋活動を計測。押し出し開始時の姿勢が同じでもCMJの方が高く跳び、開始時の関節モーメントの違いが説明要因となった。高さの差を弾性エネルギーだけには帰せない。
研究2:Kubo et al.(2007)
男性24名の足関節だけを使う跳躍実験。CMJとSJの差は腱剛性と筋活動の両方に関連した。全身のジャンプとは異なる課題で、相関から1つの原因を断定できない。
男性24名の足関節だけを使う跳躍実験。CMJとSJの差は腱剛性と筋活動の両方に関連した。全身のジャンプとは異なる課題で、相関から1つの原因を断定できない。
研究3:Donahue et al.(2021)
運動習慣のある男性22名が、静止を含むSJとCMJを実施。CMJの跳躍高は大きかったが、平均の力やパワーではSJが大きい項目があった。高さだけから、力発揮の全体像を読み取ることはできない。
運動習慣のある男性22名が、静止を含むSJとCMJを実施。CMJの跳躍高は大きかったが、平均の力やパワーではSJが大きい項目があった。高さだけから、力発揮の全体像を読み取ることはできない。
主に成人男性の実験であり、小学生の合格基準や最適な練習配分は示していない。差が大きいほど優秀、差が小さいと腱が弱い、という序列は作らない。
打ち手(レッスンで使えるもの)
| ✕ やりがちな間違い | 理由 |
|---|---|
| 高さの差を、そのまま腱の能力と呼ぶ | 筋活動や力の立ち上がり、動作条件も差に含まれる。 |
| SJで直前に沈み直しても同じ記録に混ぜる | 反動なしという課題条件を満たさなくなる。 |
以下は研究を現場へ応用するコーチング案。研究と同じ効果を保証する手順ではない。
1.2種類の課題を説明する
安定した床で低い跳躍から動きを確認する。SJは楽に保てるしゃがみ姿勢で一度止まり、そこから沈み直さず跳ぶ。姿勢を保てない場合は記録比較を急がない。
止まった位置から、もう一度沈まずに跳んでみよう。
2.見比べる条件を揃える
手の位置、しゃがみの深さ、靴、床、休息をできる範囲で揃える。横から見て静止と沈み直しを確認し、条件が崩れた試技を同じ扱いで比較しない。
今のは少し沈み直したね。違う跳び方として分けておこう。
3.2つの記録をそれぞれ残す
差や比率だけでなく、CMJとSJの記録と動きの特徴を別々に記録する。両方が伸びれば差が小さくなる場合もあるので、差だけで成長を判断しない。
止まって跳ぶ時と、沈んで跳ぶ時、それぞれ前よりどうだった?
既存指導との接続
既存の跳躍指導で行う姿勢とタイミングの観察を、測定条件の確認にも使う。静止からの押し出しと切り返しを別の課題として見て、1つの数値で身体の性質を決めない。
コンテンツ化の可能性
| 媒体 | テーマ案 |
|---|---|
| 動画台本 | 反動あり・なしの高さの差だけで、ばねは測れる? |
| コーチ研修 | SJの沈み直しを見逃さない観察手順 |
Sources
Bobbert et al. (1996). Why is countermovement jump height greater than squat jump height?Kubo et al. (2007). Influences of tendon stiffness, joint stiffness, and electromyographic activity on jump performances using single jointDonahue et al. (2021). Comparison of Countermovement and Squat Jumps Performance in Recreationally Trained Males出典確認:2026-09-21。公開書誌・抄録または閲覧できた本文の範囲で照合。対象集団・測定条件は各研究で異なる。
