本当は悩みの原因わかってるんじゃないか?という予想
さて、そもそも陸上アカデミアとは「陸上(かけっこ含む広義の陸上競技)」の「アカデミア=学校」です。
にも関わらず、サッカーの質問が届いたということは、相談者様は十中八九「サッカー 速く走る」の様なキーワードで検索をして、陸アカブログにたどり着いたはずです。
としたら、自分でもなんとなく「俺、足遅いから点決められないんじゃね?」という予想はついているということになります。
そしてその予想は当たっているという2008年のドイツの研究を、今回はお届けしたいと思います。
最も多いゴール直前&アシスト直前の行動は直線ダッシュである
研究概要
今回お届けするのは2007~2008年のドイツの研究です。
ドイツナショナルリーグでの360ゴールをビデオで撮影し、目視により確認します。
そしてそのゴール及びアシストの前に最後に行った行動を集計するという内容です。
どちらのシチュエーションでも観察された行動は以下の6つでした。
- 特定の行動なし
- 回転
- 直線ダッシュ
- 方向転換ダッシュ
- ジャンプ
- 組み合わせ
です。
ここから得点選手、アシスト選手の行動内訳を見ていきたいと思います。
結果1.得点選手
まず得点した選手の結果からです。
こちらがまとめた円グラフです(自作)。
得点選手の行動結果
- 直線ダッシュ:45%(161)
- ジャンプ:16%(57)
- 回転:7.8%(28)
- 方向転換ダッシュ:6.0%(22)
- 特定行動なし:25:2%(92)
※()は件数
※※ここでいう特定行動なしは、ドリブルもしていません。ドリブルをしていれば直線ダッシュのボールありに分類されます。
結果2.アシスト選手
続いてアシスト選手の結果です。
アシスト選手の行動結果
- 直線ダッシュ:38%(137)
- ボール保持:68%(93)
- 回転:7.8%(28)
- ジャンプ:6.1%(22)
- 方向転換ダッシュ:5.0%(18)
得点選手の51%、アシスト選手の43%は直前でダッシュをしている
ここまでで得点前の51%、アシスト前の43%はそれぞれスプリント(ダッシュ)をしているということがわかりました。
これだけでもスプリントの重要性はわかりますが、そのスプリント状況も調べられています。
得点選手の直線スプリントは45%でしたが、その45%の状況を詳細に解説したグラフがこちらです。
得点選手の直線スプリントの内訳
これを見ると、
- 対戦相手なし:109/161=68%
- ボールなし:121/161=75%
つまり、全ゴールのうち30.1%=3割が(360ゴールのうち109ゴール)1人での直線ダッシュ(or 直線ドリブル)から生まれ、全ゴールのうち33.6%(360ゴールのうち121ゴール)がボールは持たないただのダッシュから生まれるということがわかります。
つまりボールをドリブルしない単純なスプリント能力を鍛えるだけで、30%以上の得点シーンで活躍できる可能性が高まるわけです。
1人での直線ダッシュが速くなると得点シーンの3割に絡める可能性が
これ、さらっと書きましたが凄いことですよね。
直前の行動がダッシュでゴールするということは物理的に自分でボールは運ばないということになります。
なのでその場合のゴールは
- クロスに合わせる(シュート、ヘッド)
- バックパスに合わせる
- CK
となり、結局こういうシーンです。
これは決まった例ですが、もちろんゴールシーンの背後にはゴールにならなかったプレーも存在します。
直線スプリントの32%は相手(ディフェンダー)がいる状態でダッシュをして決めているので、ディフェンダーの方が足が速くシュートを防がれたシーンも当然ながらあると思います。
そのケースでもし相手ディフェンダーより足が速ければ、相手は自分を触ることはできないので、物理的に邪魔される心配がありません。
ということは、相手DFより速く走れるだけでより多くのチャンスが生み出せるわけです(ボールのあり、なし問わず)。
当然足を速くするだけで3割のゴールチャンスに必ず絡んで得点率が跳ね上がるとは言いませんが、ただの直線ダッシュを速くすることは、結果的に自分の足元のテクニックやシュートスキルを活かす確率を上げるということになります。
チャンスの舞台に立てる確率が上がるということですね。
ディフェンダーこそスプリント力が必要だ!
ここまでで「いや、俺(息子)ディフェンダーだから関係ないし」と思った方もいるのではないでしょうか?
ところがどっこい、先程のグラフの右側をもう1度見てみましょう。
68%がアタッカーをフリーにしてしまっての失点という事実
ここで68%が1人でダッシュと書いてあります。
つまりディフェンダー側から見ると、68%が抜け出されたor スピードで置いていかれたということになります。
結果的にここから得点されているので(この研究は得点されたシーンを集めているので)、もしこのディフェンダーの足がアタッカーより速かったらどうでしょうか?
運動会やスポーツの試合を見ていてもわかると思いますが、本当に足が速い子は2,3mの差であれば瞬く間に詰めてしまいます。
なのでアタッカーが3割のゴールチャンスに絡む&得点確率を上げるためにスプリント力を鍛えるならば、ディフェンダーはそれを防ぐために足を速くしなければならないわけです。
加えてアタッカーはゴール内にシュートするために正確にアクションを起こさなければなりませんが、ディフェンダーはそれを乱すだけでよいです。
なので、よりスプリント能力がディフェンス能力に直結すると思っております。
つまり、ディフェンダーこそスプリント能力を向上させなくてはならないのです。
アオアシに見る、相手より速く動くことの特異性
アオアシ25巻(小林有吾)より
アオアシ25巻(小林有吾)より
これはサッカー漫画アオアシの25巻の一コマですが、異常な瞬発力で相手よりも速く動けてしまうので1対1で抜かれてもボールを取り返せてしまうという主人公のチームメイトの活躍シーンです。
ここまでは大げさだとしても、結局サッカーが対人スポーツである以上、「相手より速く移動できる」というのは攻守どちらにおいても極めて強力なアドバンテージになるわけです。
ちなみに「相手より速く移動できる」という状態になると、一種の安心感が自分にはあるので、非常に落ち着いてプレーすることができます。
これは子供とサッカーしている大人が、「抜かれても後から追いつけるから」と余裕でいられるのと同じです。
加えて例えばセンターバック(リベロ)がやたらに足が速かったとします。
すると相手はどれだけよいクロスを上げても瞬足で回収されてしまいますし、縦横無尽に自陣を守られては一向に攻められません。
そんなチームと戦うと、相手は自信を失いますよね?
逆に自分のチームにそれほど強力なコマがいたら、周りは落ち着いてプレーすることができます。
つまり「足が速い」というのは実際の戦力的にもそうですが、精神的にもかなり大きな役割を果たすわけです。
実際に先程のアオアシでも、この選手が投入されてすぐチームメイトにこんな発言をしています。
アオアシ25巻(小林有吾)より
ハッタリだとしても(本人はそんなつもり無いと思いますが)、非常に心強いですよね(アオアシはこういう描写が非常に上手いです)。
ということで「ディフェンダーこそスプリント能力を鍛えよう」ということでした。
さあ、ここまででアタッカーとディフェンダーはスプリント力が非常に大切という話をしました。
では、残りのミッドフィルダーは?
シュート、アシスト、ディフェンス、ミッドフィルダーもスプリント力が必要だ!
当然大切です。
- 味方へのアシスト
- 自身のシュート
- 自陣でのディフェンスやハイプレス
むしろ、ミッドフィルダーはどちらの役割も求められる分、より必要な能力かもしれません。
実際陸上アカデミアでパーソナルで見ているサッカー選手はどちらもミッドフィルダーですし(レギュラーレッスンではディフェンダーやアタッカーも多いです)。
これは本人、保護者様が特にサッカーへの意識が高い問題もあると思いますが、どちらかというと「試合全体を通して、スプリント力が足りない」ということが露呈しやすい環境なのではないかと思っています。
スプリント能力が足りないのはもちろんですが、うちで見ているサッカー少年で特に見られる傾向として他にも、
- 動き出しの3歩が遅い
- 前傾姿勢が取れない
- 切り返しが遅い
- ジャンプ力が足りない
ということが上げられます。
ほとんどが「瞬発力不足」から来る問題なので、サッカー少年少女に送る瞬発力の上げ方をいずれ書いていこうと思います。
まとめ
サッカーの全ゴールの3割はボールを持たない直線ダッシュから生まれるので、フォワードもミッドフィルダーもディフェンダーももれなく自分の役割のために直線ダッシュを速くしろ!
PS.
今回参考にした論文はこちらです。
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