サッカーでゴールを決めるための最も大切な要素はダッシュ力である
※2023/10/01にサイト改修を行ったためデザイン等崩れている箇所がありますが、順次修正予定です。
「サッカーでもっと点を入れたい」子供からそう言われたらあなたならなんと答えるだろうか?
もっと練習する?足元の技術を高める?シュートの精度を高める?
本業サッカーコーチでもない限り、ズバッと答えるのはなかなか難しいだろう。
そんなあなたへ「サッカーの全ゴールの3割がフリーでの直線ダッシュから生まれている」という研究を元に、「もっと点を入れたいのであればダッシュ力を鍛えるべき」という1つの結論をお届けしよう。
この記事を読めば、子供から「もっと点を入れたい!」と言われても、「よし、じゃあ走るのを速くしようか!」と自信満々に答えられるようになるだろう。
目次
本日の質問
[lnvoicel icon=”https://rikujou-ac.com/wp-content/uploads/2020/10/IMG_20201022_094603-scaled.jpg” name=”内川”]
こんにちは、陸上アカデミアの内川です。
今日は「サッカーでもっと得点に絡みたいならダッシュ力を身に着けろ!」ということについてお話していきたいと思います。
[lnvoicer icon=”https://rikujou-ac.com/wp-content/uploads/2019/01/c4fc4680e68b3b317ed2c664c8955517.png” name=”悩める相談者”]
サッカーでFWです。
最近得点を決めれません。
ペナルティーエリアに入っても相手に取られる、ラストパスに1歩足りなくて合わせられないなど理由は様々です。
ですが改善法がわかりません。
どうしたら得点できるようになりますか?
今日はこの質問に回答していきます。
まとめると
- サッカーのFW
- 得点率が低く、その原因がわからない
ですね。
ではここから回答していきます。
結論
サッカーでゴール前での得点力を上げるために高めるべき能力は直線のダッシュ力だ!
ではここから解説していきたいと思います。
イントロ
実は陸上アカデミアブログの記事最上部にはこうしたカテゴリー一覧があります。
この中で唯一「球技」だけ青くなっていない(=リンクがついていない)です。
理由は基本的にブログは質問への感想をメインに書いているので、球技への質問が来なかったためです。
加えて球技以外でも走り方だったり運動会での勝ち方だったりと、他にも書くことがあるので後回しにしていました。
そんなところに今回の質問が来たため、やっと球技カテゴリーを始動することにします。
自分で問題設定→課題解決できないのは最早日本人病
今回の本題の前に、質問を振り返ってみましょう。
サッカーでFWです。最近得点を決めれません。
ペナルティーエリアに入っても相手に取られる、ラストパスに1歩足りなくて合わせられないなど理由は様々です。
ですが改善法がわかりません。
どうしたら得点できるようになりますか?
これですね。
その中の太字にした部分を見てみてください。
この太文字の内容を眺めてみると、相手に取られる(技術的問題)、1歩足りない(走力的問題)ということまでは理解できるはずです。
しかしそこで思考が止まってしまっています。
これは日本のほとんどのスポーツ教室で行われている指導の害悪部分が凝縮された問題なので、普通に育てたらそうなるのは仕方ありません。
参考までにそれに対する内川の想いと対応方法をまとめておきました(それぞれ明日、明後日に更新します)。
[kanren url=”https://rikujou-ac.com/uchikawa-005″]
[kanren url=”https://rikujou-ac.com/uchikawa-004″]
本当は悩みの原因わかってるんじゃないか?という予想
さて、そもそも陸上アカデミアとは「陸上(かけっこ含む広義の陸上競技)」の「アカデミア=学校」です。
にも関わらず、サッカーの質問が届いたということは、相談者様は十中八九「サッカー 速く走る」の様なキーワードで検索をして、陸アカブログにたどり着いたはずです。
としたら、自分でもなんとなく「俺、足遅いから点決められないんじゃね?」という予想はついているということになります。
そしてその予想は当たっているという2008年のドイツの研究を、今回はお届けしたいと思います。
最も多いゴール直前&アシスト直前の行動は直線ダッシュである
研究概要
今回お届けするのは2007~2008年のドイツの研究です。
ドイツナショナルリーグでの360ゴールをビデオで撮影し、目視により確認します。
そしてそのゴール及びアシストの前に最後に行った行動を集計するという内容です。
どちらのシチュエーションでも観察された行動は以下の6つでした。
- 特定の行動なし
- 回転
- 直線ダッシュ
- 方向転換ダッシュ
- ジャンプ
- 組み合わせ
です。
ここから得点選手、アシスト選手の行動内訳を見ていきたいと思います。
結果1.得点選手
まず得点した選手の結果からです。
こちらがまとめた円グラフです(自作)。
- 直線ダッシュ:45%(161)
- ジャンプ:16%(57)
- 回転:7.8%(28)
- 方向転換ダッシュ:6.0%(22)
- 特定行動なし:25:2%(92)
※()は件数
※※ここでいう特定行動なしは、ドリブルもしていません。ドリブルをしていれば直線ダッシュのボールありに分類されます。
結果2.アシスト選手
続いてアシスト選手の結果です。
- 直線ダッシュ:38%(137)
- ボール保持:68%(93)
- 回転:7.8%(28)
- ジャンプ:6.1%(22)
- 方向転換ダッシュ:5.0%(18)
得点選手の51%、アシスト選手の43%は直前でダッシュをしている
ここまでで得点前の51%、アシスト前の43%はそれぞれスプリント(ダッシュ)をしているということがわかりました。
これだけでもスプリントの重要性はわかりますが、そのスプリント状況も調べられています。
得点選手の直線スプリントは45%でしたが、その45%の状況を詳細に解説したグラフがこちらです。
これを見ると、
- 対戦相手なし:109/161=68%
- ボールなし:121/161=75%
つまり、全ゴールのうち30.1%=3割が(360ゴールのうち109ゴール)1人での直線ダッシュ(or 直線ドリブル)から生まれ、全ゴールのうち33.6%(360ゴールのうち121ゴール)がボールは持たないただのダッシュから生まれるということがわかります。
つまりボールをドリブルしない単純なスプリント能力を鍛えるだけで、30%以上の得点シーンで活躍できる可能性が高まるわけです。
1人での直線ダッシュが速くなると得点シーンの3割に絡める可能性が
これ、さらっと書きましたが凄いことですよね。
直前の行動がダッシュでゴールするということは物理的に自分でボールは運ばないということになります。
なのでその場合のゴールは
- クロスに合わせる(シュート、ヘッド)
- バックパスに合わせる
- CK
となり、結局こういうシーンです。
これは決まった例ですが、もちろんゴールシーンの背後にはゴールにならなかったプレーも存在します。
直線スプリントの32%は相手(ディフェンダー)がいる状態でダッシュをして決めているので、ディフェンダーの方が足が速くシュートを防がれたシーンも当然ながらあると思います。
そのケースでもし相手ディフェンダーより足が速ければ、相手は自分を触ることはできないので、物理的に邪魔される心配がありません。
ということは、相手DFより速く走れるだけでより多くのチャンスが生み出せるわけです(ボールのあり、なし問わず)。
当然足を速くするだけで3割のゴールチャンスに必ず絡んで得点率が跳ね上がるとは言いませんが、ただの直線ダッシュを速くすることは、結果的に自分の足元のテクニックやシュートスキルを活かす確率を上げるということになります。
チャンスの舞台に立てる確率が上がるということですね。
ディフェンダーこそスプリント力が必要だ!
ここまでで「いや、俺(息子)ディフェンダーだから関係ないし」と思った方もいるのではないでしょうか?
ところがどっこい、先程のグラフの右側をもう1度見てみましょう。
68%がアタッカーをフリーにしてしまっての失点という事実
ここで68%が1人でダッシュと書いてあります。
つまりディフェンダー側から見ると、68%が抜け出されたor スピードで置いていかれたということになります。
結果的にここから得点されているので(この研究は得点されたシーンを集めているので)、もしこのディフェンダーの足がアタッカーより速かったらどうでしょうか?
運動会やスポーツの試合を見ていてもわかると思いますが、本当に足が速い子は2,3mの差であれば瞬く間に詰めてしまいます。
なのでアタッカーが3割のゴールチャンスに絡む&得点確率を上げるためにスプリント力を鍛えるならば、ディフェンダーはそれを防ぐために足を速くしなければならないわけです。
加えてアタッカーはゴール内にシュートするために正確にアクションを起こさなければなりませんが、ディフェンダーはそれを乱すだけでよいです。
なので、よりスプリント能力がディフェンス能力に直結すると思っております。
つまり、ディフェンダーこそスプリント能力を向上させなくてはならないのです。
アオアシに見る、相手より速く動くことの特異性
これはサッカー漫画アオアシの25巻の一コマですが、異常な瞬発力で相手よりも速く動けてしまうので1対1で抜かれてもボールを取り返せてしまうという主人公のチームメイトの活躍シーンです。
ここまでは大げさだとしても、結局サッカーが対人スポーツである以上、「相手より速く移動できる」というのは攻守どちらにおいても極めて強力なアドバンテージになるわけです。
ちなみに「相手より速く移動できる」という状態になると、一種の安心感が自分にはあるので、非常に落ち着いてプレーすることができます。
これは子供とサッカーしている大人が、「抜かれても後から追いつけるから」と余裕でいられるのと同じです。
加えて例えばセンターバック(リベロ)がやたらに足が速かったとします。
すると相手はどれだけよいクロスを上げても瞬足で回収されてしまいますし、縦横無尽に自陣を守られては一向に攻められません。
そんなチームと戦うと、相手は自信を失いますよね?
逆に自分のチームにそれほど強力なコマがいたら、周りは落ち着いてプレーすることができます。
つまり「足が速い」というのは実際の戦力的にもそうですが、精神的にもかなり大きな役割を果たすわけです。
実際に先程のアオアシでも、この選手が投入されてすぐチームメイトにこんな発言をしています。
ハッタリだとしても(本人はそんなつもり無いと思いますが)、非常に心強いですよね(アオアシはこういう描写が非常に上手いです)。
ということで「ディフェンダーこそスプリント能力を鍛えよう」ということでした。
さあ、ここまででアタッカーとディフェンダーはスプリント力が非常に大切という話をしました。
では、残りのミッドフィルダーは?
シュート、アシスト、ディフェンス、ミッドフィルダーもスプリント力が必要だ!
当然大切です。
- 味方へのアシスト
- 自身のシュート
- 自陣でのディフェンスやハイプレス
むしろ、ミッドフィルダーはどちらの役割も求められる分、より必要な能力かもしれません。
実際陸上アカデミアでパーソナルで見ているサッカー選手はどちらもミッドフィルダーですし(レギュラーレッスンではディフェンダーやアタッカーも多いです)。
これは本人、保護者様が特にサッカーへの意識が高い問題もあると思いますが、どちらかというと「試合全体を通して、スプリント力が足りない」ということが露呈しやすい環境なのではないかと思っています。
スプリント能力が足りないのはもちろんですが、うちで見ているサッカー少年で特に見られる傾向として他にも、
- 動き出しの3歩が遅い
- 前傾姿勢が取れない
- 切り返しが遅い
- ジャンプ力が足りない
ということが上げられます。
ほとんどが「瞬発力不足」から来る問題なので、サッカー少年少女に送る瞬発力の上げ方をいずれ書いていこうと思います。
まとめ
サッカーの全ゴールの3割はボールを持たない直線ダッシュから生まれるので、フォワードもミッドフィルダーもディフェンダーももれなく自分の役割のために直線ダッシュを速くしろ!
PS.
今回参考にした論文はこちらです。
この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!
コメント